『ウォルター・ケーニッヒのアートブック展』のお知らせ
2012年01月27日 | カテゴリー:お知らせ, イベント予定, デザイン/アート

恵文社一乗寺店 本棚エキシビジョン第一弾
『ウォルター・ケーニッヒのアートブック展』
3月1日(木)〜20日(火)
場所:恵文社一乗寺店内書棚にて |
この度当店では、代々木VILLAGE内に昨年オープンしたブックショップ、[POST]さんの協力のもとに、ドイツはケルンの出版社/ディストリビューター、ウォルター・ケーニッヒが刊行するアートブックを30数タイトル集め、展示販売いたします。[POST]のコンセプトは、定期的に一つの出版社をクローズアップし、その刊行物だけを扱うというチャレンジングなものです。確かにひとつの出版社、特に海外のアート系出版社のものをある程度まとめて俯瞰できる機会や場所というものは、日本ではなかなかありません。われわれのような洋書を買い付ける立場においても、カタログやウェブサイト以外で出てはすぐに絶版になっていく写真集やアートブックを並べて閲覧するチャンスはそうそうないでしょう。
ケーニッヒはケルンを拠点に現代美術から写真集、建築、デザインまで年間に180点ものタイトルを刊行する出版社です。その雑食性や、扱うジャンルの幅広さ故に、出版社として認識する読者は多くはないでしょう。しかし、ジャンルや判型が違うからこそ、並べてみてその出版社の指向やセンス、「癖」のようなものが浮かび上がってくるはずです。
最新の出版物から僅少となっているバックカタログまで今回当店に並ぶのは30数タイトル。同社の刊行物に関してはこちらでも少しずつご紹介させていただきますので、お楽しみに。入場料無料、立ち読みついでに手に取って楽しめる、「本棚エキシビジョン」の第一弾として開催いたします。
関連記事:
今週のおすすめ本:『アメリカ南部の家庭料理』
2012年01月22日 | カテゴリー:今週のおすすめ本, 雑学

ここ最近自宅のキッチンでよく開いた本がこちら。とはいっても、掲載されているレシピを手本に調理するわけではなく、ランダムに開いては目に飛び込んできたページを部分的に読み込むだけ。馴染みの薄い食材や調味料が使われるレシピ部分を眺めて、そのエキゾチックな味わいを想像するのも楽しいのですが、それに付随して綴られる、アメリカ南部という特殊な地域の食文化に関するあれこれが非常に面白いのです。
アメリカ料理と聞いて思い浮かぶものといえば、パサついたステーキや、煮込んだ豆、あとは・・ファーストフードやとにかく量が多くハイファットである、というぼんやりとネガティブなイメージくらいのものでしょう。しかし、著者は旅行者として食する外食のそれと、家庭の味とは一線を画すものだといいます。確かにアメリカ料理、特に南部に絞ったレシピ本というモノには類書がほとんどなく、美味しいアメリカ料理、というものをイメージするには日本人の多くはあまりにも経験不足です。
それと同時に、われわれは文学作品やハリウッド映画などで数多くのアメリカン・フードを目の当たりにしています。なんとなく視界の隅に入っていながら、見過ごしてきた細部がくっきりと甦ってくるのがこの本の楽しみ方の一つではないでしょうか。
例えば、ハリー・クレッシングの『料理人』という小説では、悪魔的なコックが料理によって家族を支配し、その財産を目当てに骨抜きにする様子が巧みに描かれます。鳥の丸焼きをカーヴィングして、食卓を囲む人間に取り分けるのは一般的にその席の主の仕事とされていますが、この作業が苦手な主人は、その料理人に見えない切り込みを入れてもらうことによって、苦労せずに捌き分けることに成功します。それによって一家の主としての威厳を保つと同時に、コックに対するある種の畏敬の念や依存心を生じさせるというのが、料理人の人心掌握術だったのです。
本書中の「ローストチキンの捌き方」というページによれば、その行程はおよそ11にも及ぶ複雑なものです。『料理人』の舞台は南部ではありませんし、登場するのも鵞鳥の丸焼きですが、この作業を軽々こなすことはある程度経験を積み重ねてきた大人の仕事であることがよくわかります。このようにアメリカの食にまつわるさまざまな「理由」のようなものがあちこちに発見できるのがこのレシピ本の楽しみ方の一つでしょう。
| 『アメリカ南部の家庭料理』
著者:アンダーソン夏代
出版社:アノニマスタジオ
店頭とこちらで販売中 |
関連記事:
今週のおすすめ本:『パラダイス・モーテル』
2012年01月15日 | カテゴリー:今週のおすすめ本, 小説

ゴシックな雰囲気のカバーイラストと「父親に殺された母親の一部を、父親自身の手でそれぞれの体に埋め込まれた四人の子ども・・・。」という帯の惹句から、いかにもグロテスクでバッドテイストな物語を想像しがちですが、猟奇的な出来事が決して悪趣味の演出で描かれるわけではありません。本書は、巧妙な仕掛けと驚くべき結末が用意された「物語についての物語」なのです。
突然の失踪以来30年ぶりに姿を現した主人公の祖父が耳にしたという陰惨でグロテスクな事件。その話に強い衝撃を受けた主人公は偶然耳にした犠牲者である兄妹たちのその後を知り、友人の助けを借りながら事件の調査に乗り出します。「自己喪失者研究所」やジャングルのバーで語られるまさに奇想の物語の数々を、妻や友人に語り、綴る「わたし」をはじめ、この作品中には物語が頻繁に口承され、人の心に宿っていきます。未開の部族に捕まり、肉体に植物を埋め込まれ、地中で土に返らんとする男の話。肉体を串刺しにし見せ物にする、大道芸人夫婦の絆。それぞれの奇妙な挿話自体が非常に魅力的であり、読者は否応なく騙りの罠に引きずりこまれるでしょう。
冒頭から既に「語り」のギミックは仄めかされているのですが、まずここに引っかからずにすんなりと読み始めてしまう読者は、いかに小説というものの前提に疑うことなくなれてしまっているからです。「私」とは誰か、この物語を創造しているのは誰なのか。いわゆる「信用出来ない語り手」や「ポストモダン小説」というジャンルともひと味違う内容ですが、いわゆる「正統派」がお好きな方はラストに憤然としてしまう恐れありなので、あまりおすすめ出来ないかもしれません。
1994年に東京創元社より「海外文学セレクション」として刊行されたタイトルの文庫化です。
『パラダイス・モーテル』
著者:エリック・マコーマック / 出版社:東京創元社
店頭にて販売中 |
関連記事: